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甘樫丘東麓遺跡(甘樫丘東麓遺跡(飛鳥藤原第157次調査)の発掘成果を伝えるニュースが、マスコミでも大きく取り上げられました。
甘樫丘東麓遺跡は、蘇我氏の邸宅だったのでしょうか?

今回の発掘調査では、高さ最大1mの石垣が、過去の検出分を合わせて全長34m以上続いていることが分かりました。(今回の調査では、19m)
窪地(幅約8メートル・深さ1.2m以上の谷地形)の東斜面の途中から、一辺20~40cmの石を貼り付けるように積み上げているようです。斜面の傾斜角は、約50度だと伝えられています。
石垣は、北西・南東方向に造られていますが、一直線ではなく、今回の調査区では、1.6m分直角に北東に折れる部分がありました。その曲がった付近の石垣側面には、階段状に並べた石もあったようです。

また、石垣の最下段には、排水口と思われる石組みもあったそうですが、報道写真では充分に確認できませんでした。土砂崩れの対策として、今に繋がる技術なのかと興味が湧きましたが、現地で確認する以外にはなさそうです。このような技術は、当時は優れたのもであったのかも知れません。そこには、渡来系技術者の存在も考えられ、彼等を支配下においていた蘇我氏ならではの施設であったかも知れませんね。

石垣は、防御の為とするには低い印象がありますが、谷地形の下から見ると、高さを感じるのかも知れません。これも、実際に見ないと分からないように思います。また、石垣の上の平坦面には、柵や塀のような物があったのでしょうか。「城柵(きかき)」と日本書紀に書かれた施設が頭に浮かびます。
出土した土器から、これらの遺構は7世紀前半から中頃に築かれたものと推測されています。まさに蘇我氏の時代です。

日本書紀に書かれる、皇極3年(644)11月条、『蘇我大臣蝦夷と子の入鹿臣は、家を甘檮丘に並べ建て、大臣の家を上の宮門、入鹿の家を谷の宮門とよんだ。また、その男女を王子とよんだ。家の外には城柵を造り、門のわきには兵庫を造り、門ごとに水をみたした舟一つと木鉤数十本とを置いて火災に備え、力の強い男に武器をもたせていつも家を守らせた。』

「家の外には城柵を造り・・・」発見された石垣は、この城柵を支える基礎部分なのでしょうか、あるいはこの石垣を「城柵」と呼んだのでしょうか。木で造った柵列の柱穴などは検出されていないようです。
状況証拠は、ますます蘇我氏邸宅跡を指し示しているように思われます。もっとも、邸宅の中心部ではなく、一部の施設だと思われますが。

この他に、石敷き遺構や石組溝も検出されています。当初、天武朝と考えられていたようですが、石敷遺構も7世紀前半から中頃とされたようです。ただし、石敷きと石垣が同時に存在したかどうかは分からないそうです。
石敷遺構は、調査区の東端にあり、張り出した尾根の際になります。検出されたのは、長さは9m・幅1.5~3mで、こぶし大の石が敷き詰められていました。山側には、縁取りの石が並べられ、谷側には石組み溝(底に石は無い)が巡っていたようです。また、大型の柱穴8個も検出されました。柱穴は、塀が建てられていた可能性も考えられます。柱穴の時期については、報道では分かりませんでした。
石敷き遺構は、尾根上または尾根に沿って造られた施設の石敷広場とも考えられそうですが、主要施設への通路とも考えられるかも知れませんね。

他の時期のものとしては、7世紀後半の石組み溝が検出されたようです。これまでの調査でも、7世紀を通して遺構が存在しており、何度も改変されながら、この地が活用され続けたことを物語っています。

今回の調査では、たくさんの土器が出土しているようです。報道写真で見る限り、完形の物も出土したようです。ニュースで見た感じだけですが、飛鳥時代の前半の物であったように思いました。

蘇我氏の邸宅は、甘樫丘の全域に広がっていたのではないでしょうか。東麓遺跡は、その一端に触れたように思います。書紀に書かれたことの考古学的な裏づけが目に見えるようになるには、まだ時間が掛かりそうですね。これからの継続調査が、益々楽しみになってきました。

写真は、5月1日時点の石敷きの検出状況です。

sP1110170.jpg

甘樫丘東麓遺跡の現地見学会
は、21日午前11時から午後3時まで。1時間ごとに解説があるもようです。
現地見学会が益々楽しみになりました。(^^)
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